カーオーディオにDSPを入れると、かなり細かいところまで音を追い込めるようになります。その中でも、最初に「これ、どうすればいい?」となりやすいのがタイムアライメント(TA)じゃないでしょうか。特にセパレートスピーカーをパッシブネットワークで鳴らしていると、ツィーターとウーファーで取り付け位置が違います。ツィーターはAピラーやダッシュボード付近、ウーファーはドア。となると、
- ツィーターの距離を入れるの?
- ウーファーの距離を入れるの?
- それとも2つの中間くらい?
と迷いますよね。自分も最初はここで悩みました。そこで今回は、パッシブネットワーク接続のセパレートスピーカーでは、どの距離を基準にタイムアライメントを設定するのかを、自分なりに整理してみます。
結論:まずはウーファーの距離を基準にします
いきなり結論からいきます。パッシブネットワークで接続しているセパレートスピーカーなら、自分はウーファー(ミッドバス)までの実測距離を基準にします。もちろん、これがどんな車、どんなスピーカーでも100%正解という話ではありません。ただ、調整を始めるときの基準としては、ウーファーを使うのが分かりやすいです。では、なぜウーファーなのか。
そもそもタイムアライメントって何をしているの?
まず、タイムアライメントの役割を簡単に確認しておきます。タイムアライメントは、スピーカーから耳までの距離の違いによって発生する音の到達時間差を調整する機能です。運転席に座って左右のドアスピーカーを見ると、左右で距離が違いますよね。例えば右側のスピーカーが近く、左側のスピーカーが遠い場合、そのまま鳴らすと右側の音が先に耳へ届きます。すると、ボーカルが中央ではなく右側に寄って聞こえたり、ステージの位置関係が不自然になったりします。そこでDSPを使って、近い側の音を少し遅らせます。これがタイムアライメントです。要するに、左右のスピーカーから出た音が耳に届くタイミングを合わせていく機能ですね。
パッシブ接続だと、ツィーターとウーファーを別々には調整できません
ここが今回のポイントです。パッシブネットワークを使ったセパレートスピーカーは、ざっくり書くとこんな接続になっています。
DSP → アンプ → パッシブネットワーク
├ ツィーター
└ ウーファー
アンプから出た信号を、パッシブネットワークがツィーター用とウーファー用に分けています。つまりDSPから見ると、ツィーターとウーファーは別々の出力ではありません。そのため、
- ツィーターだけ5cm遅らせる
- ウーファーだけ10cm遅らせる
といった設定はできません。左右それぞれの出力に対して、設定できるタイムアライメントは基本的に1つです。だから、「じゃあ、どっちの距離を入れるの?」という話になります。
ウーファーを基準にする理由
ここでウーファーを選びます。理由はシンプルで、ウーファー(ミッドバス)が音楽の中心になる帯域をかなり広く担当しているからです。「ウーファーだから低音だけでしょ」と思うかもしれませんが、カーオーディオのミッドバスはそんなに単純ではありません。スピーカーによって違いはありますが、低音から中域まで再生するので、音楽の定位や質感に関係する情報をかなり受け持っています。一方、ツィーターは主に高域を担当します。さらに、パッシブネットワークは単純に「高音と低音を分ける箱」ではありません。クロスオーバー周波数やフィルター特性、レベル、位相関係などを考えて、ツィーターとウーファーが自然につながるように設計されています。なのでパッシブ接続では、ツィーターとウーファーを完全に別々のスピーカーとして考えるより、2ウェイの1システムとして考える方が分かりやすいです。その基準として、自分はウーファーの距離を使います。
ツィーターの方が近いけど、それでもいいの?
ここは疑問に思うところですよね。例えば、
- ツィーター:70cm
- ウーファー:100cm
だったとします。「耳から近いツィーターの70cmを入れた方が、時間的には正確なんじゃないの?」と思います。でも、パッシブ接続ではツィーターだけを独立して遅らせることができません。しかも、ツィーターとウーファーはクロスオーバー付近で音がつながっています。そのため、ツィーターの物理的な距離だけを基準にしても、2つのユニットのつながりが最適になるとは限りません。「近いユニットの距離を入れる」という考え方だけで決めるより、まずウーファーを基準にして、そこから音を聴いて調整する方が扱いやすいです。
実際にタイムアライメントを設定してみます
1. まず運転席の位置を決めます
最初に、普段運転するときのシート位置に合わせます。シートを動かせば耳の位置も変わるので、ここを毎回バラバラにすると測定値も変わってしまいます。自分の場合は、普段の運転ポジションに座った状態を基準にします。
2. 左右のウーファーまでの距離を測ります
次に、リスニングポジションから左右のウーファーまでの距離を測ります。例えば、
- 左ウーファー:120cm
- 右ウーファー:85cm
だったとします。この場合は、この2つの数値をそのまま記録しておきます。測るときは、左右とも同じ基準位置から測ることが大切です。可能ならスピーカーの中心位置を基準にするといいでしょう。
3. 測った距離をDSPに入力します
測定した左右の距離をDSPへ入力します。機種によっては距離ではなく「ms」などの遅延時間で設定するものもあります。その場合は、DSP側の設定方法に合わせてください。
4. ボーカルの位置を確認します
ここからは耳で確認します。まず、ボーカルが中央に定位する曲を再生します。ボーカルがダッシュボードの中央付近に自然に浮かんで聞こえるか確認します。さらに、ボーカルが大きく広がりすぎていないか、左右の楽器が変な位置にいないかも聴いてみます。
5. 数cmずつ動かしてみます
実測値を入れて終わりではありません。そこから設定値を少しずつ動かして、音の変化を確認します。自分なら、いきなり10cm、20cmと大きく動かすのではなく、数cm程度ずつ変更します。同じ曲の同じ部分を繰り返し聴くと、ボーカルの位置や音像の変化が分かりやすいです。
実測値と最終設定値が違っても大丈夫です
ここで、「実測値が85cmなのに、最終的に95cmになったんだけど……」となることがあります。これは別におかしくありません。車の中では、メジャーで測った距離だけで音の聞こえ方が決まるわけではないからです。例えば、
- スピーカーの音響中心
- 取り付け角度
- ドアやダッシュボードからの反射
- 左右の取り付け条件
- パッシブネットワークによる位相特性
などが影響します。特にスピーカーの音響中心は、実際に取り付けた位置と完全に同じとは限りません。周波数によっても変化します。なので、実測値は調整を始めるためのスタート地点くらいに考えておけばOKです。最終的には、数字が合っているかよりも、実際に聴いて自然な定位になっているかを優先します。
アクティブ接続なら話は変わります
ここまでの話は、パッシブネットワークを使っている場合です。DSPからツィーターとウーファーへ、それぞれ独立した出力を接続するアクティブ接続では話が変わります。アクティブ接続なら、ツィーターとウーファーを別々にDSPで制御できます。そのため、各ユニットに対して、
- タイムアライメント
- クロスオーバー
- レベル
- イコライザー
などを個別に設定できます。この場合は、ユニットごとの到達時間だけでなく、クロスオーバー付近の位相関係まで見ながら調整することになります。パッシブ接続とは、そもそもの調整方法が違うわけです。
まとめ
パッシブネットワークでセパレートスピーカーを鳴らしているなら、タイムアライメントはウーファー(ミッドバス)までの実測距離を基準にするところから始めるのがおすすめです。まず実測値をDSPに入力して、そこからボーカルの定位やステージのまとまりを聴きながら、数cmずつ調整していきます。実測値と最終的な設定値が違っても問題ありません。カーオーディオでは、スピーカーの音響中心や車内の反射など、実際の距離だけでは説明できない要素があるからです。自分の場合、タイムアライメントは「測った数字を正解として入力する」というより、実測値をスタート地点にして、実際に聴きながら合わせていくものと考えています。パッシブ接続でどこから調整すればいいか迷ったら、まずはウーファーの距離から始めてみてください。
※ サブウーファーのタイムアライメントも考察しています。


