カーオーディオの音質調整をしていると、「スピーカーは正相と逆相のどちらにすればいいんだろう?」と悩むことがあります。
自分の車は、ツィーター・ミッドレンジ・ミッドバスの「なんちゃって3WAY」+サブウーファーの4WAY構成になっているので、今回はそれぞれのスピーカーの位相をどうするのが良いのか、実際の設定値をもとに計算してみました。
最初はクロスオーバーの周波数とスロープだけを見れば判断できると思っていたのですが、実際にはタイムアライメントやスピーカーの取り付け位置も関係してきます。そこで今回は、クロスオーバー、スロープ、タイムアライメント、そして実際のスピーカーの距離差まで考えて、正相・逆相のどちらが有利なのかを考えてみました。
ただし、今回の計算はあくまで理想的なフィルターを前提にしたものです。実際のスピーカーやパッシブネットワークには固有の位相特性がありますし、車内では反射や指向性もあります。そのため、計算結果をそのまま正解とするのではなく、計算を出発点にして、最後は実際に聴いて確認するという方法で調整しています。
現在のカーオーディオ構成
今回計算したカーオーディオの構成は以下のとおりです。
アンプ・DSP
carrozzeria DMH-SZ700
ツィーター
carrozzeria TS-T740
- チャンネル:HIGH
- DSPハイパス:1250Hz -6dB/oct.
- 付属ネットワーク:ハイパス 4600Hz -12dB/oct.
TS-T740には、DSP側の1250Hz -6dB/oct.ハイパスに加えて、付属ネットワークによる4600Hz -12dB/oct.のハイパスが入っています。
ミッドレンジ
BLAM LFR52
- チャンネル:HIGH
- DSPハイパス:1250Hz -6dB/oct.
- パッシブネットワーク:fd-ho-wfx6 ローパス 約4500Hz -6dB/oct.
LFR52のローパスは、fd-ho-wfx6というパッシブネットワークを使用しています。
ミッドバス
carrozzeria TS-C1730SII
- チャンネル:MID
- DSPハイパス:50Hz -24dB/oct.
- DSPローパス:1250Hz -24dB/oct.
サブウーファー
carrozzeria TS-WX140DA
- チャンネル:LOW
- 付属コントローラー:ローパス 50Hz -12dB/oct.
タイムアライメントの設定値
現在のタイムアライメントは以下のように設定しています。
| スピーカー | 右 | 左 |
|---|---|---|
| TS-T740 | 95.2cm | 131.6cm |
| BLAM LFR52 | 95.2cm | 131.6cm |
| TS-C1730SII | 103.6cm | 137.2cm |
| TS-WX140DA | 245cm | 245cm |
TS-T740とLFR52のタイムアライメントが同じなのは、実際のスピーカーまでの距離が同じだからではありません。この2つは同じHIGHチャンネルに並列接続しているため、DMH-SZ700側では個別にタイムアライメントを設定できません。そのため、TS-T740とLFR52には同じタイムアライメント値が適用されています。
一方、実際の取り付け位置には距離差があります。現在の条件では、TS-T740はLFR52より、
- 右:約9cm遠い
- 左:約5cm遠い
という位置関係になっています。この距離差は、4500~4600Hz付近では無視できません。4500Hzの波長は約7.6cmしかないため、数cmの距離差でも位相には大きな影響があります。
正相・逆相とは?
マルチウェイのカーオーディオでは、クロスオーバー付近で複数のスピーカーが同じ周波数帯を再生します。このとき、それぞれの音の位相がうまく揃っていれば音が強め合います。逆に位相が大きくずれていると、お互いの音を打ち消してしまい、クロス付近で音が薄くなることがあります。そのため、正相・逆相を決めるときには、クロスオーバーの周波数だけではなく、フィルターの位相回転やタイムアライメント、実際のスピーカーの距離まで考える必要があります。スロープは音圧の減衰量だけではなく、周波数による位相回転も伴います。
1250HzのLFR52とTS-C1730SII
まずは、LFR52とTS-C1730SIIがクロスする1250Hzから考えました。
- LFR52:ハイパス 1250Hz -6dB/oct.
- TS-C1730SII:ローパス 1250Hz -24dB/oct.
1250Hzの波長は約27.4cmです。
タイムアライメントによる距離差
右側では、
LFR52:95.2cm
TS-C1730SII:103.6cm
なので、設定値だけを見ると8.4cmの差があります。
左側では、
LFR52:131.6cm
TS-C1730SII:137.2cm
で、5.6cmの差があります。
ただし、この2つは別チャンネルなので、それぞれにタイムアライメントを設定できます。そのため、今回の計算ではタイムアライメントによって到達時間を補正した後は、距離による相対的な位相差は0°として考えることにしました。
1250Hzのフィルターによる位相を考える
ここでは、理想的なフィルターとして考えてみます。LFR52の-6dB/oct.ハイパスは、カットオフ付近で約+45°。TS-C1730SIIの-24dB/oct.ローパスは、理想的な4次フィルターとして考えると約-180°です。このまま同じ位相で使うと、大きな位相差が残ります。そこでLFR52を逆相にすると180°反転するため、理論上は位相差を小さくできます。
今回の条件では、
LFR52:逆相
TS-C1730SII:正相
とすることで、1250Hz付近の位相関係を合わせやすくなると考えました。
LFR52とTS-C1730SIIを実際に聴き比べた
計算だけではなく、実際に正相と逆相を聴き比べてみました。
最初に聴いたときは、LFR52を正相にすると定位が高くなったように感じて、「こちらのほうが良いのかな」と思っていました。
ところが、再度、聴き直してみると、LFR52は逆相のほうがボーカルがはっきりしていて、こちらのほうが聞きやすいと感じました。正相にしたときに定位が高くなったように感じたのは、LFR52の音圧が下がって目立たなくなったことが原因だったようです。つまり、「音像が高くなった」という変化だけを見れば良くなったように感じますが、実際にボーカルの明瞭さや中域の存在感まで含めて聴くと、逆相のほうが良い結果でした。
そのため、今回はLFR52を逆相、TS-C1730SIIを正相にすることにしました。この結果は、今回の理想的なフィルターを使った計算で考えていた方向とも一致しています。
4500~4600HzのLFR52とTS-T740
次に、LFR52とTS-T740がつながる4500~4600Hz付近を考えます。
- LFR52:fd-ho-wfx6 ローパス 約4500Hz -6dB/oct.
- TS-T740:付属ネットワーク ハイパス 4600Hz -12dB/oct.
さらにTS-T740には、DSP側の1250Hz -6dB/oct.ハイパスも入っています。
フィルターだけで考えるとどうなる?
LFR52の4500Hz -6dB/oct.ローパスを理想的な1次ローパスとして考えると、カットオフ付近の位相は約-45°です。TS-T740の4600Hz -12dB/oct.ハイパスを理想的な2次ハイパスとして考えると、カットオフ付近の位相は約+90°になります。さらにTS-T740には1250Hz -6dB/oct.のハイパスが入っています。4500Hz付近では、この1250Hzハイパスによる位相回転は大きくありませんが、完全に0°ではありません。理想的なフィルターとして考えると、TS-T740側は約+105°、LFR52側は約-45°となり、両者には約150°の位相差がある計算になります。そのため、フィルターのスロープだけを見ると、同位相が有利とは言えません。むしろ理想的なフィルターだけなら、TS-T740側を180°反転したほうが位相差を小さくできる計算になります。
実際の距離差も考慮する
ただ、実際の車ではTS-T740とLFR52の距離が完全に同じではありません。今回の位置関係では、TS-T740はLFR52より、
- 右:約9cm遠い
- 左:約5cm遠い
という差があります。
4500Hzの波長は約7.6cmなので、9cmや5cmという距離差はかなり大きな位相差になります。右側の9cmは約427°、左側の5cmは約237°に相当します。360°を1周として考えると、右は約67°、左は約237°の位相遅れとして扱えます。フィルターによる約150°の位相差と組み合わせると、同位相の場合、右側では約83°、左側では約87°程度の位相差になる計算です。つまり、右と左では位相差の向きは違いますが、どちらもおおむね90°程度の位相差に近い状態になります。
このように、実際の取り付け位置まで考慮すると、「フィルターのスロープだけを見て逆相が正解」と単純には言えなくなります。さらに、LFR52側にはfd-ho-wfx6という実際のパッシブネットワークが入っているため、実際の位相特性が理想的な-6dB/oct.フィルターと完全に一致するわけでもありません。そのため、4500~4600Hzについては、計算結果を参考にしつつ、実際の音を確認する必要があります。
TS-T740については、今回はまだ結論を出さない
TS-T740については、今回の時点では正相・逆相を十分に比較できていないため、ここでは結論を出さないことにしました。TS-T740とLFR52は同じHIGHチャンネルに接続されているため、DSP上では2つを個別にタイムアライメント設定できません。また、TS-T740には付属ネットワークの4600Hz -12dB/oct.に加えて、DSP側の1250Hz -6dB/oct.も入っています。LFR52側にはfd-ho-wfx6の4500Hz -6dB/oct.があります。さらに右側では約9cm、左側では約5cmの距離差があります。
このように条件が複数重なっているため、TS-T740については、計算だけで最終的な位相を決めるのではなく、あらためて実際に聴き比べて判断することにします。
50HzのTS-C1730SIIとTS-WX140DA
次は、ミッドバスとサブウーファーがクロスする50Hzです。
- TS-C1730SII:ハイパス 50Hz -24dB/oct.
- TS-WX140DA:ローパス 50Hz -12dB/oct.
50Hzの波長は約6.86mです。TS-WX140DAのタイムアライメントは245cmにしています。TS-C1730SIIとTS-WX140DAは別チャンネルなので、それぞれ個別にタイムアライメントを設定できます。そのため、1250HzのLFR52とTS-C1730SIIと同じように、今回の計算ではTA補正後の距離による相対的な位相差は0°として考えます。
TS-WX140DAは逆相のほうが良かった
50Hzについても、実際にTS-WX140DAを正相と逆相に切り替えて聴き比べました。自分の耳で聴いた感じでは、TS-WX140DAを逆相にしたほうが良いと感じました。特に逆相にすると、低音がきわだって聞こえました。ミッドバスからサブウーファーへのつながりもこちらのほうが自然に感じたので、TS-WX140DAは逆相にしています。
低域については、実際の車内ではサブウーファーの設置場所や車室内の反射なども大きく影響するため、ここも最終的には実際に聴いて判断するのが良いと思います。
最終設定で周波数特性を測定してみた
今回、実際に聴き比べて決めた設定で、周波数特性も測定してみました。測定にはスマートフォンの周波数測定アプリを使用しています。結果はこちらです。

グラフを見ると、100Hz付近から音圧が上がり、125Hz付近から数kHzまでは大きな谷がなく、比較的なだらかにつながっています。3kHz以降も大きく落ち込むところはなく、16kHz付近まである程度続いています。一方で、25~80Hz付近は低めになっていて、50Hz付近もそれほど高くありません。
ただし、ここは測定方法にも注意が必要です。今回使用したのはスマートフォンの周波数測定アプリと内蔵マイクです。スマートフォンのマイクは測定専用のマイクではないため、特に低い周波数ではマイク自体の性能や測定環境の影響を受けている可能性があります。そのため、50Hz付近がグラフ上で低く見えているからといって、サブウーファーの音圧が実際にそのまま低いと判断することはできません。今回のグラフは、正確な音圧レベルを測定するというより、同じ条件で現在の音のバランスを確認するための簡易測定として見ています。
周波数特性のグラフだけでは位相は判断できない
今回、周波数特性も測定してみましたが、このグラフだけで正相・逆相の正解を判断することはできません。1/3オクターブのグラフは、それぞれの周波数帯でどのくらいの音圧になっているかを見るものです。位相そのものを測定しているわけではありません。そのため、グラフに大きな谷がないから正相が正解、逆に50Hz付近が低いから逆相が間違い、といった判断はできません。
今回の計算と実際の試聴結果
今回の検証結果をまとめると、以下のようになりました。
| クロス | 計算 | 実際に聴いた結果 |
|---|---|---|
| LFR52-TS-C1730SII 1250Hz |
LFR52逆相が有利 | LFR52逆相 |
| LFR52-TS-T740 4500~4600Hz |
距離差を含めると単純には判断できない | 未確認 |
| TS-C1730SII-TS-WX140DA 50Hz |
理論だけでは判断しにくい | TS-WX140DA逆相 |
今回の1250Hzについては、計算で考えていた方向と実際に聴いた結果が一致しました。一方で4500~4600Hzについては、まだTS-T740の最終的な位相を十分に確認できていないので、今回は結論を出していません。
現在確認できている位相設定
今回あらためて聴き比べた結果、現在確認できている設定は以下のとおりです。
| スピーカー | 現在の判断 |
|---|---|
| TS-T740 | 未確認 |
| BLAM LFR52 | 逆相 |
| TS-C1730SII | 正相 |
| TS-WX140DA | 逆相 |
まとめ
今回、自分のカーオーディオで正相・逆相を調整してみて、計算だけではなく、実際に聴いて確認することの大切さをあらためて感じました。
特にLFR52は、最初は正相にしたときの定位の高さが良い変化だと思っていましたが、聴き直してみると音圧が下がって目立たなくなっていただけでした。実際には逆相にしたほうがボーカルがはっきりして聞きやすいという結果になりました。
TS-WX140DAも、逆相にすると低音がきわだって聞こえたため、こちらも逆相にしています。
現在確認できている設定は、
LFR52:逆相
TS-C1730SII:正相
TS-WX140DA:逆相
です。
一方、TS-T740については、LFR52との4500~4600Hz付近のつながりを含めて、まだ十分に聴き比べられていないため、今回は結論を出していません。
今回のように、クロスオーバーのスロープだけではなく、タイムアライメントや実際の取り付け位置、パッシブネットワークなども含めて考えると、正相・逆相を単純なルールだけで決めるのは難しいと感じました。そのため、まず計算で候補を絞り、実際に聴いて確認する。この方法で少しずつ調整していくのが、一番、分かりやすいと感じています。今回の調整結果をベースに、今後も実際の音を聴きながら少しずつ詰めていきたいと思います。
※ 位相をなめていました。

※ カーオーディオの位相とは?

※ 使用している機材はこちらです。
