コンデンサーで低音をカットするハイパスフィルター、コイルで高音をカットするローパスフィルター。この仕組みを理解すると、次に気になるのが「6dB/oct」や「12dB/oct」といった減衰スロープではないでしょうか。DSPのクロスオーバー設定でも当たり前のように表示されていますが、「どうやって6dBや12dBを作っているの?」「なぜ減衰スロープを変えられるの?」と疑問に思ったので、今回はその仕組みを調べてみました。
減衰スロープって何?
減衰スロープとは、不要な周波数をどれくらいの勢いで小さくするかを表すものです。例えば、ツィーターを3kHzでハイパスフィルターに設定したとします。3kHzより高い音はほぼそのまま通りますが、3kHzより低い音は徐々に小さくなります。この「徐々に小さくなる速さ」が減衰スロープです。6dB/octなら1オクターブ(2倍の周波数)離れるごとに6dBずつ減衰し、12dB/octならその倍の速さで減衰します。つまり、数字が大きいほど不要な音をしっかり抑えられるということです。
コンデンサー1個で6dB/octになる
ハイパスフィルターは、コンデンサーを1個直列につなぐだけで作れます。コンデンサーは低い周波数ほど電気を流しにくくなるので、低音が少しずつ減衰します。これが1次フィルターで、減衰スロープは6dB/octになります。ローパスフィルターなら、コンデンサーの代わりにコイルを1個使います。
じゃあコンデンサーを2個つなげれば12dBになる?
最初は自分もそう思いました。でも調べてみると、そうではありませんでした。コンデンサーを2個直列につないでも、コンデンサーの働きを重ねているだけなので、基本的にはカットオフ周波数が変わるだけです。これでは2次フィルターにはならないそうです。つまり、減衰スロープを急にするには、違う働きをする部品が必要になります。
コイルは「残った音」を逃がす役目だった
ここでコイルが登場します。2次のハイパスフィルターでは、
- コンデンサーを直列につなぐ
- コイルをGNDへ並列につなぐ
という構成になります。最初にコンデンサーが低音を減らします。しかし、低音が完全になくなるわけではありません。そこで、通り抜けてきた低音を、今度はコイルがGNDへ逃がします。つまり、
- コンデンサーが1回目の減衰
- コイルが2回目の減衰
という役割分担になっているわけです。これでようやく、「6dB/octから12dB/octになる理由」が少し見えてきました。
コンデンサーとコイルを交互に使う理由
さらに調べてみると、3次や4次のフィルターも同じ考え方でした。ハイパスフィルターでは、
- 1番目:コンデンサー(直列)
- 2番目:コイル(GNDへ並列)
- 3番目:コンデンサー(直列)
- 4番目:コイル(GNDへ並列)
という構成になります。ここで気付いたのは、「交互につないでいる」のではなく、「役割を交互に担当している」ということです。直列につながる部品は、通したい周波数を選びます。並列につながる部品は、不要な周波数をGNDへ逃がします。この2つの役割を交互に繰り返しているから、減衰がどんどん急になっていくんです。ローパスフィルターでは逆になり、
- コイル(直列)
- コンデンサー(GNDへ並列)
からスタートします。つまり、ハイパスはコンデンサーから、ローパスはコイルから始まる。この違いだけで、考え方は同じでした。

24dB/octのほうが優秀?
24dB/octのほうが性能が良さげに感じますが、実際はそう単純ではありません。確かに24dB/octは不要な帯域をしっかりカットできます。一方で、位相への影響やスピーカー同士のつながりも考える必要があります。逆に6dB/octのほうが自然につながるケースもあります。だから、数字が大きいほど良いというわけではなく、スピーカーやシステムに合った減衰スロープを選ぶことが大切なんです。
まとめ
今回調べてみて、一番納得できたのは、コンデンサーとコイルを交互につないでいるのではなく、それぞれ違う役割を交互に担当しているということでした。直列の部品で通したい音を選び、並列の部品で不要な音をGNDへ逃がす。この動作を段階的に繰り返すことで、6dB/oct、12dB/oct、18dB/oct、24dB/octと減衰スロープが急になっていきます。部品ごとの役割が分かると、「なぜこの位置にコンデンサーやコイルがあるのか」が見えてきます。仕組みが分かるとネットワーク回路を見るのが少し面白くなってきました。同じように疑問を持っていた方の参考になればうれしいです。
