前回まで、カーオーディオの正相・逆相について、クロスオーバーの周波数や減衰スロープ、スピーカーの取り付け位置などをいろいろ考えてきました。ただ、実は一つだけやり残していたことがあります。それが、ツィーターとミッドレンジの位相確認です。
今回使っているのは、ツィーターがcarrozzeria TS-T740、ミッドレンジがBLAM LFR52です。この2つ、どちらもHIGHチャンネルにつないでいます。なので、DSPの設定だけでは「ツィーターだけ逆相」「ミッドレンジは正相」みたいに、個別に切り替えて聴き比べることができません。今まで後回しにしてきましたが、今回は、そこをちゃんと確認してみます。
今回のスピーカー構成
まず、今回の構成を整理しておきます。
ツィーターはcarrozzeria TS-T740です。
・チャンネル:HIGH
・ハイパス:DSPで1250Hz -6dB/oct.
・付属ネットワーク:4600Hz -12dB/oct.
ミッドレンジはBLAM LFR52です。
・チャンネル:HIGH
・ローパス:パッシブネットワークで約4500Hz -6dB/oct.
そして、もう一つポイントがあります。TS-T740はLFR52よりも遠い位置に取り付けています。右側は約9cm、左側は約5cm遠いです。この距離差があるので、位相の判断がちょっとややこしくなります。
前回までは両方とも正相
前回までの自分の判断では、
TS-T740:正相
LFR52:正相
としていました。
クロスオーバーの減衰スロープだけを見ると、TS-T740は逆相の方が良さそうなんです。ただ、TS-T740の方がLFR52より遠い。つまり、音が耳に届くまでの時間差があります。なので、「スロープだけなら逆相だけど、距離まで考えたらどうなんだ?」というところで、簡単には決められませんでした。そこで、ひとまず両方とも正相にしていたわけです。でも、ここまで考えたなら、やっぱり実際に聴いて確認してみたい。ということで、配線を変えます。
まずは左側のツィーターを逆相にしてみる
以前から、ちょっと気になっていたことがあります。右側の高音は普通に聞こえるんですが、どうも左側の高音が弱いんです。そこで、まず左側のTS-T740だけ、プラスとマイナスを逆につないでみました。つまり、左のツィーターだけ逆相です。すると……、左の高音がかなりはっきり聞こえます。今まで「ちょっと弱いな」と思っていた左側の高音が、明らかに聞きやすくなりました。「やっぱり左は逆相なのか?」と思って、そのまましばらく聴いてみました。ところが、今度は別のところが気になってきます。
今度は右側が弱く感じる
左の高音がしっかり聞こえるようになったのはいいんですが、今度は右側の高音が弱く感じます。まあ、左右で位相が違うんだから、そりゃそうか……という感じです。さらに気になったのが、バスドラムの定位です。ボーカルなどの中音域は、ちゃんと中央にいます。ところが、バスドラムを聴くと、どうも左に寄って聞こえます。「なんでバスドラムが左に?」と、ここで少し考えました。
バスドラムは低音だけじゃない
バスドラムというと、どうしても「低音の音」というイメージがあります。でも、実際には低音だけではありません。ドンッと鳴ったときのアタック感や音の輪郭には、高域側の成分も含まれています。ということは、左側だけツィーターの位相を変えたことで、その高域成分に引っ張られて、バスドラムの定位まで左に寄っている可能性があります。左右とも同じ条件にしてみよう。ということで、今度は右側もやってみます。
ツィーターを左右とも逆相にしてみる
右側のTS-T740も、プラスとマイナスを逆につなぎました。
これで、
TS-T740:左右とも逆相
LFR52:左右とも正相
です。
そして、もう一度いつもの曲を聴いてみます。すると、これがかなりいい。左右の高音がきれいに揃いました。音場も前より広がったように感じます。そして、気になっていたバスドラム。今度はちゃんと中央に戻りました。ボーカルも中央、バスドラムも中央、高音から低音まで、音像がスッと中央にまとまっています。単純に「ツィーターの音が大きくなった」というわけではありません。TS-T740とLFR52のつながりが自然になったという感じです。
タイムアライメントを何度も調整していたのは何だったのか
ここで、今までの調整を振り返ってみて、左右の定位がちょっと気になるたびにタイムアライメントを調整していたなと思いました。「右をもう少し遅らせてみよう」「いや、今度は左が変だな」みたいな感じで、ちょこちょこ修正していたんです。ところが、今回ツィーターの位相を変更してみると、その違和感がかなり消えました。ということは、今までタイムアライメントの問題だと思っていた左右の定位のズレには、ツィーターとミッドレンジの位相関係も関係していたのかもしれません。もちろん、「原因は全部位相でした!」とまでは言えません。ただ、今回実際に配線を変えてみて、音像がここまで変わるとは考えてもみませんでした。
やっぱり実際に聴いてみないと分からない
今回の検証で良かったのは、計算上の判断と実際に聴いた結果を比較できたことです。前回までの計算では、クロスオーバーのスロープから考えるとTS-T740は逆相が有力でした。でも、TS-T740はLFR52より遠い位置にあります。この距離差があるので、「じゃあ絶対に逆相」とまでは言えませんでした。そこで実際に配線を変えてみたところ、自分の車ではTS-T740を逆相にした方が明らかに良かったです。
今回の結果は、
TS-T740:逆相
LFR52:正相
です。
この状態で、高音の左右差がなくなり、音の広がりも出ました。さらに、バスドラムの定位も中央に戻り、これまで気になっていた違和感がかなり解消されています。
今回のまとめ
前回までやり残していた、ツィーターとミッドレンジの位相確認。今回は実際に配線を変更して聴き比べてみました。最初は左側のTS-T740だけを逆相にしてみたところ、左の高音ははっきり聞こえるようになりました。ただし、左右で位相が違うことで、今度は右の高音が弱く感じたり、バスドラムが左に寄ったりしました。そこで右側も逆相にしたところ、左右の高音が揃い、バスドラムも中央に定位するようになりました。最終的には、TS-T740:逆相|LFR52:正相が、今回の自分の環境では一番自然に聴こえました。
これまでタイムアライメントを調整しても残っていた違和感が、位相を変更することで解消されたのは大きな発見でした。カーオーディオの調整では、どうしてもタイムアライメントやイコライザーの調整に目が行きがちです。でも、どうしても定位がしっくりこないときは、クロスオーバー付近にある音の位相も疑ってみる。今回の自分の環境では、そこが意外な盲点になっていました。やっぱりカーオーディオは、理論だけで答えを出すのは難しいです。理論で候補を絞って、最後は実際に聴いてみる。今回もそれで、今まで気になっていた違和感を一つ潰すことができました。
※ 前回までの記事はこちらです。



※ 使用している機材はこちらです。
